お盆の花[2]――案外ややこしい

昔からの盆花の栽培はどれも日が良く当たり、やせ気味で乾く庭先や畑の方が美しくできる。まずキキョウは市販の切り花用の種子やどこかの庭先で9月に結実したものを一日中日の当たる所に4〜5月にまく。1年目は真直な茎は出ず、2年目から立茎となる。放っておくと7月咲いてしまうので、6月下旬に茎の上半を切りとる。下から出た枝に8月開花する。実生1年の肥培した根を掘って冷蔵しておき5月末に植える法もある。オミナエシは咲いている茎をとって来て植えても活着しない。根元に横にのびた茎の先に葉のみの枝があるからそれを植える。早咲種の苗は切り花用扱いの種苗商で求める。種子は9月末に熟する。3月末に年中絶対に日陰にならぬ固い地面にまきつけると良く生え育つ。翌年か翌々年に開花する。地際に横に出る芽は強ければ翌年咲いてくれる。株が茂りすぎると梅雨期等にすっかり腐ることがあるから、肥料や水は余りやらないこと。地際の葉は広く、はじめは切れ葉にならない。
ワレモコウやカワラナデシコを里で作るとデブになって野生のような美しさは出にくい。ユウスゲの仲間は4倍体の外国で改良された大輪のヘメロカリスといわれ、友人達の作出した優秀品種が沢山あるが盆ころは終わりとなる。ミソハギ(ミズハギ)は田の畦等にも作られていたが、6月中旬にピンチすると盆ころに最盛期となる。昔の盆花作りは案外ややこしいものである。
   (辰野日報・昭和61年8月10日掲載)

あなただけの大切な本を作ってみませんか―中央印刷がお手伝いいたします

箔を使った「風林火山」の扇子をつくりました。ご覧下さい。

園芸事はじめ/信州でガーデニングを楽しむためのエッセイ集