お盆の花[1]――さえない栽培物

お盆の花というとキキョウやオミナエシ等を山へ採りに行き、伊那市では上農高生が山で採ってきたものを売り歩くニュースが毎年新聞に報じられる。所が最近はあれ程山野にあったキキョウもオミナエシも山で見つける事が困難になってしまい、老人にとってはちょっとさびしくなってしまう。12日の朝に抱きかかえる様に採ってきたキキョウ、オミナエシ、フジバカマ(当地産はヒヨドリバナである)、ワレモコウ、カワラナデシコ、盆膳の箸にしたりウリやナスの馬の足に使ったユウスゲの花梗または水辺に栽培されたミソハギ等々よくもまあ姿を消したものである。開墾畑の辺は特に豊富でコオニユリ等は戦前よりは非常に多く殖えていたのに。どれも乾燥気味の山林原野が大好きな植物で、造林されたり草刈りをしなくなった為の犠牲者である。代りに洋花の方は益々種類も増し、豪華になっていく。将に昔の仏様びっくりと言った次第である。
盆花のうち栽培容易なのはキキョウだけ、他は切り花用に栽培されるのはオミナエシのみ。それ等も7月盆やそれ前の生花用で早咲きで、最近やっと晩咲きのキキョウ、オミナエシの品種改良が一部の種苗商ではじまったばかり。昔からの盆花はまだ当分自分で栽培しなければならない。小宅のオミナエシの種子さえ数年前に広島市植物公園から貰ってきたものである。サワギキョウやギボシも栽培物は色がさえない。
   (辰野日報・昭和61年8月3日掲載)

あなただけの大切な本を作ってみませんか―中央印刷がお手伝いいたします

箔を使った「風林火山」の扇子をつくりました。ご覧下さい。

園芸事はじめ/信州でガーデニングを楽しむためのエッセイ集