せんてい[3]――花や実に十分光を

せんていというとせんていばさみで新しい枝先を適当な間隔にパチパチと切るという安易な考え方が一般である。しかし、事はそう簡単ではない。樹の種類、植え付けの目的と場所の広狭とか樹齢によって作業が異なってくる。
第一番目に考え、着手するのは樹液がスムースに流れるように幹から太枝へそして新梢へ流れ、夏の葉で作られた養分が逆に流れるような骨組みの幹や太枝が出来ているか、花や実に十分光があたるように幹枝が配置されているかをまず見極める事が大切である。
幹や太枝が急に細くなっているとそこから徒長枝が出やすいし太枝が多過ぎると先の方の花や実をつける新梢の日当たりが悪く、数も少なく弱ってしまうものである。従ってせんていの第一にやる仕事は放任樹ならば思い切って大枝抜きからはじめる。しかし、モモやサクランボは大枝を切るとそこから枯れこむ。どの果樹も上に向かっては伸びやすいので上向きにばかり伸びて下枝がなくなってしまう。見上げるようなカキやクリの大木になってはどうにもならない。
上向きの太い幹は1年でも早く切ってしまい、横に広がった枝を大切に残しておく。太い所をノコギリで切る場合に、断面が上向きにならぬように斜めに切る事。枝の分れ目のすぐ上よりは太さに応じ10〜30センチ上で切って、2、3年後に下の枝が太くなってから残部を切り落す方が具合がよいのだが、物の本にも指導にもそうなっていないのは一体どうしたことだろう。
   (辰野日報・昭和61年2月16日掲載)

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