菊[5]──恐ろしいサビ病

秋に咲かせる大輪菊や懸崖菊、そして千輪咲きに盆栽作り、これらは皆様ご承知の通り。日本菊の種類はその所属する団体によって色々である。展示の形式も種々。こんな問題は愛菊家の皆様におまかせします。
食用菊は青森を中心として東北の方で好まれ、満開期に花弁を抜きとって、さっとゆでた後に調味料を加えて食べる。阿房宮という黄の中輪菊が一番有名な品種である。どんなキクの花でも食べられるが、一般的には苦味が強いので、苦味の少ない品種が食用に栽培されている。食用菊の栽培は株分けでやり、挿し木はしない。数芽株を植えつけ肥培して太い茎をのばすのが収量をあげるのに必要である。生の花弁を三杯酢等で食べるほか、ゆでたあとすのこに拡げて乾かし、菊海苔として乾燥食品とする。
キクの病気で恐ろしいのはサビ病であるが、この菌は秋のうちに新芽に着く。秋出た芽より冬至芽を選べというのは感染していない苗ということである。当地方では普通は寒さでこの菌は育たない。然し暖地産の苗を春購入する時は取扱業者も気をつけているが、注意を要する。
キクは実生で容易に発芽し、その年のうちに咲いてくれる。当地では結実期に凍ってしまうので、採種するには完熟まで凍らぬように保温する。新花の作出は交配実生による。
   (辰野日報・昭和60年12月20日掲載)

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