菊[4]──長日生長短日開花性

昔から特別の手を加えなくても夏咲く夏菊とか、晩秋から冬咲く寒菊というものがあったが、皆あまり見事ではなかった。ただ今の切り花や鉢物のポツトマムは品種の改良のほかに、日の長さを調節して、年中生産販売されている。これは菊は日の長い時に生長し、日が短くなると蕾を作る性質を利用したものである。この性質を長日生長短日開花性という。
信州から夏出荷される菊は冬の間に育苗しておき、春畑に植えだし、6〜7月に黒幕をかけて日を短くして、蕾ができたら遮光をやめ、夏咲かせる。暖地では夏遮光すると温度があがりすぎ、上手に咲いてくれない。冬や春に出荷される菊の切り花は加温して晩秋や冬に茎をのばし、日の短いのを電灯をつけて日を長くし、必要の茎の高さになるのを見越して遮光し、短日にして蕾を作らせる。豊橋方面が、冬から春の菊の出荷地であるが、近年は加温費のいらない沖縄で多量の切り花が生産され、全国で売られている。
ポツトマムというのは北欧米で開発された鉢植用の中輪菊で、長日と短日を組み合わせてプログラムを組み、何月何日に挿した苗は何月何日にどこの市場に出荷するというように、数日の差なく計画的に開花、出荷させている。草丈を低くするにはわい化剤を使用する。一般の切り花用菊は茎頂の一花を咲かせ、他の蕾は摘みとるが、最近のスプレー菊は蕾を摘まず、蕾全部を咲かせ切り花とする。
   (辰野日報・昭和60年12月14日掲載)

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