秋の七草[2]──芳香なフジバカマ

フジバカマは古く中国から渡来した植物で、生乾きの時に香芳があり、漢名を蘭草とか香草という。開花時の全草を乾燥させたものが利尿、通経、オウダンに薬効があるという。関西では野生状態になっている。この辺では真のフジバカマは山野にないが、極めて近縁のヒヨドリバナは信州の野山にはどこにでもあり、盆の花には欠かせないものであった。
真物のフジバカマは根茎が横に長く伸び茎はつるつるしているが、ヒヨドリバナは根茎は短く茎はざらついている。花の咲きかたは全くよく似ていて、真直に茎を伸ばし、フジバカマは対生、ヒヨドリバナは対生あるいは4枚が輪生している。葉片が3裂していることもある。8月に茎頂に淡褐色の小花がオミナエシと同様に群がって咲く。ヒヨドリバナの近緑種にサワヒヨドリがある。どれもこれも近代の美しい草花の間では地味すぎる花で、現代の秋の七草を選べば落選であるが、日当たりの良い乾く傾斜地に咲いている時は野趣豊かな野草である。栽培を特にしたい時は日の長くあたる所で乾燥気味に扱う。乾きすぎると下葉は枯れあがるし、多肥では全く美しさなし。
秋の七草中残るはナデシコであるが、本物のカワラナデシコも最近は山の土手等でも見かけなくなった。地際をはっている芽が翌年咲くのが、土手草などを刈らなくなって日照不足で育たないからである。これは保存したい。
   (辰野日報・昭和60年9月27日掲載)

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