秋の七草[1]──選び直す必要も

秋の七草は万葉集巻八山上憶良詠草花二首「秋の野に咲きたる花指折りかき数ふれは七くさの花」「萩が花尾花(ススキ)葛花(クズ)撫子の花(カワラナデシコ)女郎花(オミナエシ)また藤袴(フジバカマ)朝顔の花(キキョウ)」となっている。
アサガオはそのころまだ渡来しておらず、奈良朝の末期に薬用として入ったもので、秋の七草の朝顔はキキョウといろいろの資料で判定されている。ススキやクズの花では色気がなさすぎるので。
昭和11年に東京日日新聞で、文芸家の選出により秋の新七草「オシロイバナ、キク、コスモス、シュウカイドウ、ハゲイトウ、ヒガンバナ、アカノマンマ(イヌタデ)」を牧野富太郎博士が解説された。これも、現代では雑草のイヌタデなんぞも観賞する人はいないので選び直す必要があろう。
ヒガンバナは当地には野生がないが、方々の開発で少なくなったり、皇居の濠辺に満開する美しさから各地の観光地で秋の花として再認識されている。
現在はクズも根から冬季採ったでんぷんが本物のクズ粉であるが、ジャガイモなどのでんぷんにとって代わられ本物は特殊の和菓子に使われるくらい。山林原野の悪性蔓草、アメリカでは砂漠の緑化に重要視され、昭和戦前に種子が多量に輸出されたが北米でも今日都市部では悪性雑草とされ、シカゴの市内に特に多いようだ。残る文学調の植物はフジバカマだけ。
   (辰野日報・昭和60年9月20日掲載)

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