根本問題──枝垂栗によせて(2)

諏訪市上諏訪病院長から大手町のケヤキ並木の復活法を聞かれた。地下水が高いし、木の根元まで自動車が通ったので、もうちょっとのところで、あるいは今ごろはほとんど枯れていたかも知れない。根元に土盛りして自動車や人が踏み込まぬように提案した。丸太で囲い、ツツジやムラサキハナナを植え盛り土をしたところ、この根の枯れたものがケヤキの肥料になったり、ケヤキの小根が上にあがって並木は復活した。
枝垂栗はケヤキよりはるかに根の弱い木である。林内に遊歩道をつくったり、自由に歩き回るなんてとんでもない話である。遊歩道をつくり、改修することによって表土は崩れ、流下し、木にとって良いはずはない。樹木にとって地表が露出し、陽光にさらされ、しかもその土が流失することは大変迷惑な話。地表が露出していればその地表は死んだ土である。
私は旧制中学生の時訪れた高遠城のコヒガンザクラを見て以来、悲しみの目であの桜を見てきている。サクラを枯らすようなお花見騒ぎは見るに耐えぬもので、まだ高遠の桜のみ花見はしていない。今度、森林管理のベテラン小林氏を招いたことは、高遠の生んだ明治の林学の大先覚白沢先生も喜んであの世でやれやれと考えているだろう。
根本問題とはこのように地表と根を大切にすること。特に傾斜地では例えお墓の道でも重要。枝垂栗を守るには管理者以外は立ち入り禁止は当然の処置である。
   (辰野日報・昭和60年6月28日掲載)

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