枝垂栗[5]──繁殖(2)

地上部に数センチ芽が伸びてきたころから5月上旬までが最初の移植の適期である。このころは下に真っすぐに伸びるべき直根が鉢底を横にはっているのでこれを曲がったところから切り取る。この時はまだその上の直根の部分に小根があるので移植してもあまり傷むことはない。小数ならまた直根を切ったのを鉢植えにしてよいが、たくさんの場合は肥えた半日陰でもよいが畑に植え出す。管理には10センチ間隔以上がよい。夏ごろには枝垂れ性のない木は元気よく真っすぐに伸びてくるのでこれは掘り捨てる。以後も強く真っすぐにのびてくる苗は1、2年のうちに抜き捨てる。枝垂れ性の強い弱い苗は生長が遅く、まわりの苗が大きくなると日が当たらず枯死してしまうので、その年の秋から翌春には掘り取って別に植えるか盆栽用の鉢栽培をする。
実生後2年に一回くらいは改植して、枝垂れ性の良い木を残してゆく。春先には弱い枝のせん定もする。高くなる枝垂れ性の株はあまり出てこない。小野の枝垂栗の林はそうした元気な木が何百年かかっての生き残りである。ただ枝垂栗の実をまいて山へ植えたらあんな大木になるとはとんでもないことで沢底の後山へ行く途中の古木も高さは4メートルはなかったように記憶する。
小野の枝垂栗林の保護については関係者の間で完全を期していると思うが、念のために一筆。林内へは管理関係者以外の人は立ち入り禁止が当然で、最近林にのぼったスナップ写真を見せられたがとんでもない話である。
   (辰野日報・昭和60年5月31日掲載)

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