枝垂栗[3]──遺伝、整枝

枝垂れの木の種子をまいて全部が枝垂れてきたのは源平桃という紅白咲き分けの枝垂桃で1回経験があるばかり。枝垂れ性が突然変異で出ただけでその実をまいても枝垂れ性の苗が一本も生えてこない場合が多い。枝垂れ性はたいがい劣性の遺伝で、生えた苗のうちわずかしか枝垂れの株は出てこないのが普通である。幸いにわが家の枝垂栗は3分の1以上枝垂れの株が出てくる。
しかし、いくら育ててみてもよく枝垂れる株は出てくれるが少しも高く大きくなる素質の苗は出来てくれなかった。元気よく生育してくれるのはみな枝垂れないで真っ直ぐに伸びる株ばかり。やっと数年前に元気のよいよく枝垂れる木ができたので先日下辰野公園に植えてもらった。辰野では方々に枝垂栗は植えられているが、どれも出た新芽は横から下を向いて枝垂れてしまい盆栽型の木が多い。ただ、今植えられた木で大木になりそうなのは荒神山の食堂の入り口の所の木であるが、これもより高く大きな木にするためには木の上面の強い枝を強せん定すると共に、1、2年生の枝を支柱で引き上げてやる必要がある。強い枝を将来の枝ぶりを考えて引き上げてやることによって下の枝にも日があたり、枯れこむことが少ない。よく枝垂れる木ほど下枝が枯れ、そこから幹にも腐りこみ、あまり大木にならずに枯れていくことが多い。庭木、盆栽にする時は枯れ枝を絶えず除き、防腐剤くらいは塗っておくことを要する。
   (辰野日報・昭和60年5月17日掲載)

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