シャクナゲ[1]──気象条件に敏感

普通シャクナゲ(石楠)というと高山のものと考える。日本の野生のシャクナゲは庭へ植えてもなかなか育たない。深山にくらべて空気の乾く事と土の中の孔隙率が低く有機質が不足しているからである。鉢植にすると何年も無難に育てているのが見られる。しかし、毎年同じ木を咲かせることはむずかしい。
育て始めて何年目かに一杯に咲くと枯れてしまったり何年か咲かないことが多い。ツクシシャクナゲやホソバシャクナゲは比較的暖地の産であるため、信州などの野生のシャクナゲより栽培は容易である。しかし、西洋シャクナゲを扱ってみると日本のシャクナゲは栽培がむずかしいようである。
一口に西洋シャクナゲというが、この原産地はヒマラヤや中国の雲南省の多種類を中心にして欧州アルプス産の種類の交配種が主であって、近年はヤクシマシャクナゲとの交配種が世界的に大流行し、ごく最近は台湾産のシャクナゲも交配に使われはじめた。
西洋シャクナゲと言っても故郷は東南アジアの原産であり、育成されたところが日本より涼しいので一般的に耐寒性耐暑性の両面で強くないものもあるが、約150年間栽培が続けられたために栽培法は日本シャクナゲより容易である。辰野を中心とした所は冬は極度に寒く乾き、夏の昼間は熱帯並みであり、シャクナゲづくりには最も悪い気象条件である。
   (辰野日報・昭和60年3月30日掲載)

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