園芸の心得──皆様の何かの役に

新年おめでとう存じます。園芸事はじめも3年もたつと“始め”というのも何だか変です。でもまだ書かなかったことを書くのはやはりはじめであり、新しい読者にとっては知らなかったことを知ればやはり始めでしょう。というようなことより私自身が書いていて何時何処で誰が何を書き記録しているかたどってみるとそんなことはどこにも指摘されていなかったと思いあたり、ガクゼンとすることがあります。特に伊那・諏訪・塩尻のこの特殊な自然環境地帯の特徴とか、そこでどう生物と対決するかとなると書かれ、説かれたものは見当たらないという事です。
東京、大阪などの暖地中心に書かれ、放送されたものを気候的にどうスライドして自分の家庭内で園芸化するかは大変なこと。浅いけれども皆様より広範囲に、長く、また今までの学識経験者とは違った角度で栽培管理する方法の一部をお伝えするのですから、まあ、事始めでもよいでしょう。
私が一人で戦後あるいは今管理している植物の数はまあ相当なものです。また、一人でやってきた品種改良、中には改悪もありますが友人、知己の評からしても全く意想をはずれたものがある由、それが狙いであるわけですがこの土地の環境とその植物の特性と自身の体力、持ち時間を適当に組み合わせているからできることで、知ってしまえば誰でもやれる。従ってこの記事はやる気になれば皆様のやれること。まあ、書いておけば何かの役に立つでしょう。今年もよろしく。
   (辰野日報・昭和60年1月11日掲載)

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園芸事はじめ/信州でガーデニングを楽しむためのエッセイ集