カキ[4]──枝間引きは年内に

柿もぎに木に登って落ちた人は沢山ある。私はまだ柿もぎで枝が折れて落ちた経験はない。折れる所を作っておいて、そこに足をかけたり体重をあずけるので折れる、折れる所を作らなければよい。また、太い所を切っても陰芽がいくらでも出てくるので、この性質を利用して低い所に実らせ、こまかいせん定や収穫を楽にすることができる。
この、幹を低く切ったり太い枝を間引くには春先より年内の方がよい。春になるほど陰芽の発生がおくれ、特に太い所から出た陰芽からの芽には次年の花芽ができない。冬の間に高い木は(下に弱い枝があればなおよいが)、2メートル以下の所で思い切って切り落としてしまうのがよい。その切り口とか上の枝を除いて日のあたるようになった古枝からは春になって切り口や枝の曲り目から沢山の芽が出てくる。この芽がこみあっている所は遅くも6月末までに新芽の真上にのびている芽とか弱い芽は掻きとる。太い幹から上にのびている芽を残すと真っ直に上にのびる枝になってしまうから出来るだけ横にのびた枝を残す。そして、以後何年かはこの若枝の基部には害虫が付きやすいので粗皮を特にていねいに除去する。柿の粗皮は年中の何時でもよいから削りおとす。雨で粗皮の湿っている時が作業が容易である。枝の分岐部とか更新した新枝の基部の粗皮掃除が長年完全であればこの枝の上に登っても枝は折れる危険が大幅に減少する。柿の木から落ちぬには長年の整枝が大切である。
   (辰野日報・昭和59年12月7日掲載)

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