大木を大切に[6]──東洋特産のイチョウ

イチョウは東洋特産の銘木で、針葉樹の方に近いが、葉の広い仲間の部分で書いておこう。庭木として、また雌木の実はギンナンとして和風料理の材料であり、近年は製薬用に関西からドイツに多量の乾葉が輸出されている。この木の特徴は枝や幹の切り取りには非常に強いので街路樹に多く使われている。昔は防火樹として適していると言われたが、近代の高温火災には無力である。普通、実生で繁殖するが、実のなるまでは雄木であるか雌木であるかわからない。自由に枝をのばすと雌木の方が枝が横に開く。雌木でも多く結実する木とあまり結実しない木がある。雄の花粉は50キロ以上飛散し、芽出し直後の雌花に授精させる。実をとるために雄木を植える必要はない。どこかの社寺等の老木の雄木があるから。
実を多くとるには良く毎年実る木の枝を早春に挿すか接ぎ木をする。ただ接ぎ木をした場合、枝を接ぐので真っ直の幹はできない。リンゴの高接の様に大きな木の上に良く実る木の枝をたくさんに高接すれば数年後には元は雄木の庭木でもたくさんのギンナンが収穫できる。挿し木の達人は太い枝でも挿し木で発根させ太い盆栽を一気に作る。挿し木接ぎ木は早春が良い。諏訪市の高島城には良い雌の巨木がある。先人は城の木にも実る木を選んだのだろう。
   (辰野日報・昭和59年3月10日掲載)

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