梅と福寿草──正月の鉢物の準備

正月を飾る梅と福寿草はもう気の早い人は暖めているようだが、まだ暖めるのは早すぎる。どちらも7月に花芽をつけ始め、初冬にほぼ完成する。信州は早く寒くなり、暖地より早く大きくなるが、まだ寒さにあわせておくことが必要である。日の長さも関係する。
どんな梅や福寿草も正月に楽に咲かせられはしない。正月に咲かせやすい梅は冬至梅の仲間で普通白か桃色である。紅梅や大輪の豊後(ブンゴ)は寒さにあわせても正月に咲かせにくいし、福寿草は福寿海という早生八重種が最高で、太い芽で外を被う苞が多肉で、緑色である。当地に野生していて一般の家に見られる種類は苞がうすく、乾きやすいし、よほど肥やさぬと芽が細く、葉も緑色でないし開花期もちょっと遅い。
両方とも11月初めまでに鉢あげしておくが、まだなら早く、またできるだけ根を切らぬように、根の間には十分に培養土をつめこむ。観賞には浅鉢が見かけがよいが、乾きやすいので、培養土は排水もよく、保水力のある土がよい。余り肥えた土は必要でなく、開花後にうすい追肥をする。湿りすぎは生長をおくらせる。
中旬を過ぎたら昼間は暖かい所におく。蕾や苞を乾かさぬことが大切であるから、乾きすぎのときは霧を吹いたり日向で暑すぎぬ程度にあなをあけたポリ袋などをかけておく。夜間も冷さぬように室内に持ちこむ。昼夜とも空気が乾きすぎると、のびのびとは咲けない。
   (辰野朝日新聞・昭和56年12月12日掲載)

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