初冬の樹木の移植──根を乾かさぬこと

樹木の根は冬も生長するものが多い。特に梅や梨などの苗は、秋植えがよい。柿は地温が低いと大木は活着が悪いので10月中旬までとする。秋末から初冬に植えかえると、すぐに根をのばしはじめ、地中の肥料も吸えるので、春先の生長は苗の持っているエネルギーと新しい根で賄うので、在来の春植えより生長がはるかに良く、自然に生長してくる。
秋や初冬の移植で特に注意しなければならないことがある。落葉樹は葉のついている9月下旬からがよく、活着すれば葉がパラリと落ちる。一番大切なことは根を乾かさぬことで、掘りとりの時でも、根が乾いたら水をかけたり、ぬれムシロ等をかける。もちろん植穴は先に掘っておく。夕刻など掘った根が凍ることがある。凍らせるのが一番悪い。根が乾いていたら根に水をかけてから植穴に入れ、隙間のないように湿った土をつめて、表面を踏み固めた後、表土3センチ位はまた軟らかくしておく。その次にする事は風などで動かぬようにしっかり支柱を与える。小さい木でも2〜3本の斜め支柱でしっかり固定する。それから12月下旬の土の凍るころまでに、表土が凍らぬように、しっかりワラ、ダンボール、モミガラ、松葉等で10センチ以上覆っておく。
当地の秋植えの場合は植えつけ後の灌水はよほど乾燥した年でないと無用である。昔の庭師が庭の敷物に松葉を厚く敷いたのは、大変に合理的な方法である。ツツジ他常緑樹は枝葉を3分の1以上切りとっておく。
   (辰野朝日新聞・昭和56年11月21日掲載)

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