移植──根を乾かさぬ事が大切

移植ということは土や根の悪い状態から救う場合はよいが、移植によって根を切る大手術でもあるわけで、合理的に移植をしなければ、生長をおくらせたり、最悪の場合は枯れてしまうから、慎重にしたい。全く根を切らないで植えかえたつもりでも、水や肥料を吸う根毛はものすごく傷めつけられるからである。
移植によって傷んだ根の切り口がなおり新しい根が生育をはじめるためには、その植物に適した地温が必要である。春先の移植の失敗や不成績は地温不十分の時に移植するからである。近年は地温水温の低いうちに早々と田植えをしてかえって失敗している。今年はまだトマトやナスがかろうじて生きていられる地温になったばかり。草花苗もサルビアやケイトウはまだ地温不足。木の類の移植は発芽から葉の固まらぬ間は敬遠する。ツバキ等の暖地性の常緑樹は6月の移植で年内に根を張らせることが必要である。
移植作業で最も大切な事は根に土をつけることではなく、根を乾かさぬこと。根をたくさん切った時は枝葉も大きく切りつめる。移植前に十分灌水して水を吸わせ、植え場所の土が乾いていたら前もって水をかけて土を湿しておく。根が乾いていたら付着している土が流れ去っても水につけて十分に水を吸わせてから植えて、直後灌水の代わりに動かぬように必ず支柱をする。土が乾きすぎるようなら1〜2日後に灌水する。移植直後灌水とか水植え法は地温を下げたり根の水浸しで悪法である。
   (辰野朝日新聞・昭和56年6月6日掲載)

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