土作り──腐る物を深く埋め込む

草木が育つためには根が十分にのびられる土が必要です。小さな穴を掘って植えても育ちません。油粕、鶏糞や化学肥料だけ施しても育ちません。多用するとかえって根腐れをおこします。将来腐るものならば何でも庭や畑に深く埋めこみます。庭木の枝や落葉、除草した雑草、台所のくず等は重要な肥料源で、枯らして積んでおくか埋めてゆけば何年か後は施肥不用の良い土になります。
鉢に植物を植えるのは植物を捕虜にするのですからそれぞれに適した土を使います。鉢植えの良い所は適した培養土の使えることと適当な良い環境の所へ移せるからで、屋内で観賞するのが主目的ではありません。市販の鹿沼土・ピートや水苔等は肥料気がありません。腐葉土やバーク堆肥は肥効よりも土の性質を良くしますから多用します。当地産のミソ土は鹿沼土に似ていますが根の発育と吸肥性からは悪い土です。菊、朝顔は配合して熟成した培養土を使いますが、いろいろの原料の土を準備しておいて、その植物に従って使用直前に配合して使うのが良い方法です。腐りすぎの堆肥や腐葉土は良い土の材料ではありません。
良い土とは空気の流通と保水力があって排水もよく、それぞれの植物に必要な有機質の腐葉土や堆肥の配合されたものです。土作り第一で、次が水や光と湿度です。肥料は何をやるかという問題の前に良い土を作ることに心掛けましょう。良く根がのびる土が作れたら植物は私達を心から楽しませてくれます。
   (辰野朝日新聞・昭和56年5月16日掲載)

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